『近いなか』だからできた、理想の二拠点生活〜生きる基本に立ち返る田舎暮らし
田中 瑞華(タナカ ミズカ)
静岡県藤枝市出身。
地域おこし協力隊として2022年5月から小鹿野町に移住。
生まれたばかりの子どものアトピー発症を機に、食と農業を学び始め、マクロビオティックの総本家「クッキングスクール リマ」にてインストラクターの資格を取得。小鹿野町の高齢化を逆手に取り、『自然栽培農業とマクロビオティックで健康長寿のまち』をテーマに関係人口の増加を目的とした活動を行う。また、身体にも環境にも良い玄米を普及させるべく、「自然栽培の玄米パン 神本」という店名で玄米パンの製造販売も行なっている。普段は4歳になる息子と二人で小鹿野ライフを満喫しているが、時々夫のいる東京にも帰る二拠点生活。
Q1. 小鹿野にいらしたきっかけは何でしょうか?
令和3年の秋、小鹿野町で地域おこし協力隊をしている友人が、自然栽培について学ぶ講座を開催しまして、それに参加したことがきっかけです。子どもが生まれてから、食や自然栽培農業について学んだり実践したりしていたので、興味が湧いて学びに出かけました。そこで知り合った小鹿野の皆さんがとても親切であたたかくて、小鹿野っていい町だなと感じました。何度か講座に参加するうちに、自然環境の良さや住まう人の人柄に惹かれて、小鹿野町を気に入ってしまったんです。以前ツーリングで訪れた時には、ただ食事をしたり観光したりだけだったので、ぶっちゃけ印象にも残っていなかったんですけど(笑)。
それに加えて、自分は新しい生活を考えていました。子どもが生まれて、食事はもちろん、生活環境や自然環境がとても気になっていて、このまま首都圏に住み続けるよりは田舎で子どもを育てたいと思うようになっていました。自分が田舎育ちなもので、子どもが自然のあまりに少ない都会で育つことに不安を感じていたんです。仕事も、その時在籍していた会社での仕事は辞めて、新しい事をやりたいと思っていました。
自分は自然環境の良い田舎で子どもと暮らしたい、でも夫は今の会社を辞めたくない=通勤圏の首都圏に暮らしたい。自分の玄米パン作りの工房も東京に作ったばかりで、まだしばらく移転はさせられない。そうなると、一家丸ごとの移住ではなく、気軽に行き来できる距離での二拠点生活が良いのではないか、あれこれと条件や可能性を模索しているうちに、いつの間にか自分はそう考えるようになっていました。
そんな時、小鹿野町がたまたま地域おこし協力隊を募集していたこと、自分のやりたい自然栽培農業を実践されている方が多いこと、二拠点生活をしている方が何人もいること等々、移住にまつわる懸念点を払拭してくれるような条件があれこれと見つかり、小鹿野町への移住を本気で考えるようになりました。
実際に二拠点生活をされている方のお話を聞き、無理なくできそうだと判断したところで、小鹿野町の協力隊に応募し、今に至ります。事前にお友達ができていたので、寂しかったり困ったりしたことはなく、今年は子どもが希望の保育園に転園できたこともあり、なお交流が広がり、子どもも私も楽しく生活させて頂いています。
Q2. 実際小鹿野に住んでみて、どうですか?
いいですね! 生活の全てに車が必須なので、歩く機会を作るのが難しいですが、文句ないです。広い青空も、周りに霞む山々も、凍るような水の冷たさも、満天の星空も、全てがありがたく、心が満ち足ります。どこを向いても山と青空が見え、自然の中に人間が住まわせてもらっている感じがします。いつでも原点に立ち返ることができるし、それでいてすぐ東京にも帰ることができる。ちょうどいい塩梅だと感じています。これで昔のように、馬で移動できたら最高ですね!(笑) 物流やインフラの発達のお蔭で生活に困ることはないので、仕事さえできれば断然小鹿野がいいですね。本当は夫にも移住してもらって、こちらで一緒に暮らしたいところです。
Q3. びっくりしたことはありますか?
鹿や猿や猪が頻繁に出るところですかね。昼間からその辺をうろうろしているわけではないですが、夜は畑や庭に出ても全く珍しくない存在だというところが驚きでした。これでもっと人目につく位闊歩していたら、むしろ町中がサファリパークみたいで話題になるのに…惜しいですね(笑)。
Q4. 今後の展望をお聞かせ下さい。
もうすぐ協力隊3年目になります。一年後には卒業し、独立していくに当たり、本格的に事業計画を実行に移していかなくてはなりません。まずは、やっと継続してお借りできそうな畑に出会えたので、自然栽培農業を安定させること。そして、自然食品店と料理教室、カフェとしても機能する民泊をやろうと考えています。
自然食品店では、この秩父地域で頑張っていらっしゃる農家さんの、元氣で安心安全な農作物も取り扱いたいと考えています。地域柄宅配もやるつもりです。料理教室では、そういった農作物を活かす調理について学べます。本来の食とは、心身を整え、氣を養い、不調を改善するものです。その為にはどういった点に着目したら良いか、それをお伝えします。
カフェ兼民泊では、マクロビオティックに基づく食事の提供や惣菜の販売も行う予定です。海外ではマクロビオティックが当たり前になりつつあり、ブームになっている国もあります。インバウンドを含めて健康に氣を遣う客層を小鹿野に呼び込む拠点にしたいと考えています。今東京の工房で製造販売をしている玄米パンもこちらで作れるようにして、拡大成長させていくつもりです。
そういった事業や活動を通じて、小鹿野町に訪れる人が増え、地域が活性化するように働くこと、それが当面の目標です。