──まず、小鹿野に来たきっかけを教えてください。
太田:
東京都目黒区出身なのですが、2017年に小鹿野町へ移住しました。
移住前は、東京でシェアカフェを運営していましたが、農業にも興味を持ち始めていた時期でした。
そのタイミングで、知り合いを通じて偶然小鹿野町の地域おこし協力隊の募集を知ったんです。
そこで詳しく話を聞いているうちに「畑が余ってるからやってみないか」と声をかけてもらい、協力隊に応募しました。
当時の協力隊はフリーミッションだったので「やりたいと思っていた農業が、ここならできるしれない」と思ったんです。
タイミングもとても良かったと思っています。
──なぜエゴマを選ばれたのでしょうか?
太田:
もともと健康志向が強く、カフェ時代にエゴマ油に興味を持っていたんです。
試しにエゴマから油を搾って売ったら思った以上に好評で、「これは新しい特産品にもなるかも」と感じました。
応募書類には、「エゴマ栽培と商品化、販売まで一貫して取り組みたい」と書き、採用していただきました。

──小鹿野での暮らしにすぐ馴染めましたか?
太田:
やっぱり最初は、自然が多く良いところところだなぁと感じました。
一方、大変なこととしては、冬の寒さでしょうか。鹿が普通に出てくることとか。
あとは、初対面で家の場所を聞かれる文化は少し最初は驚きました。
「どこから来たの」じゃなくて「どこに住んでるか」をみんな聞くんだなぁって(笑)
でも、祭りや地域の集まりに参加していくうちに、自然と人の温かさを実感しました。
小鹿野は人が本当に親切で、移住者である自分にも積極的に声をかけてくれるんです。
そういう空気があったからこそ、無理なく地域に溶け込めたと思います。
──地域との関わりで意識していたことはありますか?
太田:
特に意識したわけではないですが、強いていうなら「呼ばれたら顔を出す」ことでしょうか。
消防・祭り・農業委員会なども、たくさん連れて行ってもらいましたね。
東京でコールセンターで働いた経験があるのですが、それが意外と役に立っているなと感じるのは、
聞き役に回るのが苦にならないことかもしれないですね。
おじいちゃんたちの話も楽しく聞かせてもらいました。
そうしているうちに、自然と自分の「居場所」を作ってもらえたように感じています。

──ご家族との暮らしはいかがですか?
太田:
例えば昨日も、畑で作業をしているときに娘を横で遊ばせながら一緒の時間を過ごせました。
家の目の前には畑があって、子どもが土に触れて遊べる環境があります。
四季の移ろいを肌で感じられるのも、小鹿野ならではだと思います。
散歩していると近所の方々が声をかけてくれるし、家族ではなくても、
地域ぐるみで子どもを見守る温かさがあります。顔を知ってもらうと防犯にもなりますし、
都会では得られない安心感がありますね。
──お休みの日はどんなふうに過ごしていますか?
太田:
妻も横瀬でパン屋をやっているので、家族3人でゆっくりできる日はあまり多くないんです。
でも半日でも時間が合えば、出かけることもあります。
たとえば、今度の休みは花園の道の駅に行って、少し遊んだり、珈琲館に行きたいと話していました。
ここのホットケーキ、美味しいんですよ。野菜も買ったりして、家族でのんびり過ごしたいと思っています。
子どもも1歳になって、最近ようやく一緒に座って食事できるようになったので、出かける楽しみも増えましたね。
──今後の目標について教えてください。
太田:
エゴマをより本格的に事業化していきたいです。
さらにカボスや皮ごと食べられるキウイなど、新しい作物にも挑戦して、しっかり稼げる仕組みを作りたい。
将来的には、エゴマ油を中心に海外輸出にもチャレンジしてみたいと思っています。
特に健康意識の高いイスラム圏は大きな可能性があると感じています。

──都市部から移住を考えている人へのメッセージをお願いします。
太田:
コミュニティに馴染めるか、人と馴染めるかが一番大切だと思います。
そうした人との距離感を楽しめる人なら、小鹿野町は最高の場所だと思います。
逆に、プライベートを完全に切り分けたい人には少しハードルがあるかもしれません。
でも、人との繋がりをポジティブに受け止められる人なら、すごく豊かな暮らしができるはずです。
──いきなりフラッと尋ねて、ゼロから関係を作るのは難しいとは思うので、
興味のある方はまずは移住ツアーに参加してほしいですね。
そうですね。
具体的なやりたいことがあるならどんどん相談したら良いと思います。
小鹿野に来て、実際の空気感を味わってみてほしいですね。
──太田さん、お忙しい中ありがとうございました!
※インタビューは後半へ続きます
太田さんのホームページ:エゴマカンパニー
写真・文章 移住相談員 松田遼