2025年4月12日のよく晴れた土曜日、秩父郡小鹿野町で「長留(ながる)のしだれ桜まつり」が開かれ、多くの人で賑わいました。2024年に家族で小鹿野町に移住した地域おこし協力隊の著者が、「上長留しだれ桜保存会」事務局の笠原敏彦さんにお話を伺いました。


歩きながら自然にいろいろな種類の桜が視界に入ってきて、訪れた人を出迎えてくれるようです。
川沿いの並木のしだれ桜の満開はまだ1週間くらい先(4月下旬)じゃないかと思います。満開になったら、本当に綺麗ですよ。またぜひ写真を撮りにきてください。そして桜の後は、新緑が出てきます。その緑も本当にキレイなんですよ。桜の後の新緑の季節も、散策におすすめの場所です。
川沿いに見事なしだれ桜が並ぶ風景は圧巻です。この取り組みはいつから始めたのでしょうか?
私の親の代からですので、もう40年ほど前のことになります。もともとは河川工事で周辺が殺風景になるのを心配して、何か彩りを添えたいという想いから桜の植樹が始まりました。
当時は農業が盛んで、「桜は畑の養分を吸ってしまうからいらない」という考えが一般的でしたが、それでも先進的なチャレンジとして少しずつ植えていきました。最初の植樹は、今駐車場になっている場所あたりです。
保存会ではどのような活動をされていらっしゃるのでしょうか?
町の助成金を活用し遊歩道を整備したり、草刈りや、肥料を購入したりしています。トイレは町で設置してもらいました。このトイレを設置してもらってから、利用率が高く大変助かっています。トイレには全国的にも珍しい(?)トイレギャラリーがあるんです。
長若の14区には24戸の家があるのですが、その全員が参加し植樹や整備などの活動を平成29年ごろからしています。
全員参加というのはすごいですね。
はい、みんなが協力してくれたという点がとても大きいですね。集まってコミュニケーションを取るきっかけにもなりますし。単に、桜を植えてお客さんを呼ぶということだけではなく、地域の人同士の絆を強める意味でもとても大切なことだと思っています。特にこの14区は、管理や植えるのも地域単位で行ってきたため、みんなのまとまりが強いんです。
去年は約100本、今年は約45本、新たに植えました。今後も2.3年で200本ほど増やして、今は植えていない山の斜面にも植えて、生きているうちにいっぱいにするのが目標です。若い桜の苗木は鹿に食べられてしまって大変なんですよ。
素敵な目標です!


木を植えるということは、動物園とは違い時間がかかるんです。動物園だったらたとえば極端な話、動物さえ連れてくれば来年にでも開園できるのでしょうが、木が育つのには時間がかかります。一本の桜が育っていくには30-40年はかかるでしょう。桜の移植と言っても、そんなに簡単にできるものではありません。だから、今植えた桜がこれからの人のため、長く続いて行ってほしいなというのが私の願いです。
この長留のしだれ桜の特徴は、河川敷だけではなく各家の敷地でも植えていること。だから桜が、並木だけでなく家の近くにもまばらにあるんです。いろいろな種類の桜が、ちょこちょこと。その景色が自然で良いと言って毎年来てくださるリピーターさんもいます。みんなで話を合わせて植えたわけではないんですけどね。自然とそうなりました。



春の柔らかな日差し、鳥のさえずり、そして桜を囲む山々……。この地域での心のこもったおもてなしが、来場者の心を和ませてくれました。素朴で温かなこの場所を、「あまり観光地化せず、細く長く続けていきたい」と笠原さんは笑顔で話してくれました。
この土地と、住んでいる人たちへの暖かな気持ちが伝わってくる素敵なお話を聞かせていただきました。笠原さん、この度はありがとうございました。
ぜひ、長留のしだれ桜を見に足を運んでください。
文章・写真:移住相談員 松田遼