食わず嫌いでも大丈夫!「一口食べてみようかな」を引き出す、小鹿野町のこども園・保育所の優しい給食

多くの子どもたちが苦手とする、野菜。小鹿野町の「おがの保育所(0~2歳児)」と、併設する「おがのこども園(3~5歳児)」で提供している給食でも、多くの野菜を使用しています。一方で、一部の保護者からは「家では野菜を食べないけど、給食は食べる」という声も。専属の管理栄養士、園内にある調理室、毎日子どもたちのために手作りで給食を作っている小鹿野ならではの環境が、関係しているかもしれません。今回は、子どもたちの食を優しく見守る管理栄養士にインタビューを行い、「食わず嫌い」を安心に変える調理の工夫や、五感を育む楽しい食育の取り組みなど、幅広くお話を伺いました。

※小鹿野町では、町内在住のお子さんであれば、おがのこども園・小鹿野小学校・小鹿野中学校に通う子どもについて、給食費が完全無償になっています。

知らない野菜はちょっと怖いだけ。子どもの「食わず嫌い」を安心に変える工夫

ー野菜全般が苦手という子も多いと思うのですが、どんな点に気を付けて献立を考えているのでしょうか?

私たちが一番大切にしているのは、苦手になる前にたくさんの経験をさせてあげることです。小さいうちから野菜を食べる経験をしておかないと、その食材自体を知らないままになってしまいますよね。「苦そう」という先入観を持ってしまう前に、給食として食べる回数を増やしてあげたいと思っています。もちろん、ケチャップ味にするなど、子ども向けに苦みをなるべく感じないような調理の工夫も必要です。苦手な野菜でも、「一口食べてみる!」という経験を積み重ねてもらうことで、苦手意識を減らしていけたらいいなと思っています。

ー「苦手そう」という理由で、献立から外すことはしないのですね。

そうですね。むしろ、いっぱい使っていこうと思っています。子ども向けの給食でも野菜が多いのは、たくさんの野菜を知ってもらいたいから。隠れてセロリが入っているときも、「セロリが入っているよ」と直接的に言ったら、子どもたちは食べてくれません。まずはチャレンジしてもらって「実はセロリが入っていたんだよ」と教えてあげると、「苦手だけど食べられた」とか「全く食べられないわけじゃない」と認識してくれます。小学校に入る前にそういう状態になってほしい、そんな給食作りを目指したいですね。

ー確かに、自分の小さい頃を思い返しても「食わず嫌い」が多かった気がします。

おうちの食卓に上がらない食材は、子どもにとっては未知のものです。生まれてからまだ日が浅い小さなお子さんにとって、この世界で知らないものを食べるのは、実はすごく抵抗があることなんですね。未知の食材をお父さんやお母さんが美味しそうに食べるのを見て、子どもは初めて「安心していいんだ」と分かります。ですから、園でもその抵抗感をいかに和らげてあげられるかを念頭において、給食作りに励んでいます。

ー具体的にどのような工夫をしていますか?

「挑戦してもらう」ために、実際に子どもたちの食事をサポートする保育士の先生方との連携を強めています。「残さず食べてね」という強制はしません。1歳児なら「こういう野菜もあるんだよ」と見せる。進級したら「じゃあ、一口だけ食べてみる?」と聞いてみる。「あ、やっぱり苦かったね」と言いつつも、「この前は食べられたから、また次も食べてみよう」と、少しずつ経験を積んでいってもらう流れです。たとえ食べられなくても、「今回は残念だったけど、また出してもいーい?」というスタンスで献立を立てています。

こういった次の工夫につながる子どもたちからのフィードバックは、保育士の先生方としっかり連動できているからこそです。少人数ならではの、とても良いところだなと思います。

ー小鹿野町は子どもたちが少人数であることで、一人ひとりの食べるサポートに労力を割けるのでしょうか?

そうですね。定められた基準に沿った人数がつくというのはもちろんなんですが、それプラス補助の職員が入るような体制になっています。以前は子どもたちと職員が一緒に食べる運営体制でした。しかし、それがコロナで切り替わり、職員と子どもたちは別々で、職員は交代制でご飯を食べるようになりました。そうすることで、子どもたちの食事のサポートに100%集中できる環境になり、職員の負担軽減にもつながっています。ゆっくりと一人ひとりの子どもに関われるという意味で、今の形に落ち着きました。

ーほかは、どのようなことに取り組んでいますか?

調理の工夫だけでなく、子どもたちにより経験を積んでもらうという意味で、園ではピーマンやナスなどの夏野菜を実際に育てています。収穫して、保菌検査をした職員が調理し、給食の時のおまけのような形での提供ですけど。

今朝もたまたま男の子が「先生、見て!枝豆の芽が出てきたよ」って嬉そうに教えてくれました。自分たちで種をまいて、小さな芽が出てくる。それだけでも子どもたちにとってはすごく嬉しいことなんです。さらに実がついて「もう収穫できるかな?」とワクワクして、実際に自分たちの手で採る。そうやって採りたてのものを食べると「甘いね」「美味しいね」という感動が生まれます。自分たちが大切に育てたものがこうして食べ物になるんだという、本当に貴重な経験になっています。

加えて、給食をみんなで一緒に食べるということも良い影響が大きいですね。友達みんなが食べている姿を見て、嫌いなものでも「みんなが食べているから、自分もちょっと食べてみようかな」という気持ちに自然と広がっていきます。食材に「自分で育てた」「友達が食べていた」などストーリーがつくことで、苦手なものでもハードルが下がるという効果はあるのかなと思います。

ー育てた野菜は、お持ち帰りもできるのですか?

はい、子どもたちは「大根をおでんにしてもらったよ」「お味噌汁に入れてもらったよ」「ジャガイモはカレーにしたよ」って、嬉しそうに教えてくれるんです。保育所やこども園の中だけで完結させず家庭にもつなげていくことで、より深い食育になるのではないかと考えています。

大人の予想を裏切る、子どもたちの大好きな「意外なメニュー」

取材した日の献立は「肉じゃが」と「納豆和え」

ーなかなか食べてくれなかった野菜が「このメニューにしたら食べてくれた」というような成功例はありますか?

カレーはやっぱりみんな大好きなので、よく食べてくれるメニューです。園のカレーは、普通のカレーと夏野菜カレーがあって、ナスやかぼちゃをたっぷり入れるのですが、みんなペロリと食べてくれます。もちろん子ども全員が同じものを好きというわけでもなくて、嫌いな子もいれば、大好きな子もいるので、そこは難しいところです。特定のこの野菜がどうしても食べてもらえない…という深い悩みは、実は多くありません。

ー逆に子どもたちが嫌いそうに思っていたけれど、「意外と人気」というメニューはありますか?

レンコンのきんぴらは、驚くほどよく食べてくれます。「お箸が進まないかな」と心配しながら出してみたのですが、和風の煮物や煮付けは意外と人気なんです。大人の勝手なイメージで「洋食っぽい方が好きかな」と思ってしまいがちですが、実は和食の方がよく食べてくれますね。

家庭では出せないあの旨味。管理栄養士が明かす「大量調理の魔法」

ー小さいお子さんが食べる給食として、味付けのベースや基準はありますか?

塩分量にはとても気をつけています。また、離乳食からステップアップしてくる子どもたちもいるので薄味を心がけていますが、ただ薄いだけでなく、物足りなさを感じないようにしっかりと旨味を効かせる工夫をしています。例えば、味噌汁やすまし汁に使うのは魚粉(煮干し粉)とか。人数の少ない離乳食の方は丁寧に出汁から取るのですが、約150食という大量調理の現場では少し手間がかかってしまうため、魚粉をそのまま汁に入れています。これが良い出汁になりますし、栄養も豊富です。

家庭と違って、給食は大きなお鍋での大量調理になります。そのため、一人あたりの醤油や塩の量が少なくても、食材の旨味がしっかりと全体に染み渡るんです。保護者の方から「同じレシピで作ってみても、おうちじゃなかなかこの味が出ないのよね」と言われることも多いのですが、ここが大量調理の魔法であり、良いところなのかなと思います。

ー保護者の方からよく聞かれる人気のレシピはありますか?

「チキンのトマト煮」や「のりレタスサラダ」「トマトとブロッコリーのサラダ」などはよく聞かれますね。サラダのドレッシングも、市販のものではなく給食室で手作りしている自慢の味なんです。これらのレシピは、定期的に食育だよりに掲載したり、園の「給食ブログ」でも紹介したりしています。給食ブログも毎日更新していますよ。

ーお昼ご飯だけでなく、おやつも提供されていますよね。「しゃくし菜チャーハン」や「焼きそば」など、しっかりしたメニューが多い印象ですが、これには理由があるのですか?

「おやつ」と聞くと、お菓子をイメージされるかもしれませんが、2歳頃からの未就学期の子どもたちは、今まさに身体を作っている大切な時期です。なので、おやつは単なるお楽しみではなく、「補食」として、給食にさらに加えたい栄養やエネルギーを補う食事の一部という位置づけなんです。おやつも、私たちはなるべく毎日手作りを心がけて提供しています。これも園の中に専用の調理室があって、専属の管理栄養士や調理員がいつでも子どもたちの近くにいられるからこそ実現できる、小鹿野町の自慢できる強みかもしれません。

「まずい」も大切な声。子どもたちの素直な本音と育む、最高の給食

献立表を拝見すると、2週間ごとの周期でメニューを繰り返すサイクルなんでしょうか?

子どもたちが新しい環境に慣れるまでの4月と5月は、安心のために2週間サイクルにしています。でも、園生活に慣れてきた6月以降はサイクルではなく、毎日違うメニューを提供しています。これも、少しでも多くの食材に触れて、いろいろな味に慣れてほしいという想いがあるからです。

ということは、かなりの数のレシピをお持ちだと思いますが…さらに新しいメニューを開発することもあるのでしょうか?

実は毎年、新メニューを取り入れています。実際に子どもたちに出してみて、その反応を見ながら、味付けや切り方を少しずつ改良していく形ですね。常に新しい美味しいものを出していきたいなと思っているので、どんどんチャレンジしています。

長く観察していると、以前は食べられなかったものを、食べられるようになる成長の瞬間も見ることができて、そのときは「あ、食べた!」と心の中で叫びます。子どもと一緒に「イエーイ!」ってハイタッチして、みんなで大喜びです。そこまでの成長を見届けられたときは、本当に給食を作っていて良かったなと心から思いますね。

ー子どもたちは本当に素直ですよね。

本当に素直です。だからこそ、正直に「先生、これまずい」って言われちゃうこともあって、「今回は失敗だったかな」と思う日もあります。「また出していい?」って聞くと、「もちろーん!」って返ってくることもあれば、「ダメー!」って断られることもあって(笑)。日々子どもたちと一喜一憂しながら、試行錯誤しています。

でも、メニューを考えている栄養士にとって、そうやって生の声をもらえる環境というのは、すごく貴重なものです。デスクに向かうだけではなく、クラスを回って子どもたちの表情や「美味しい!」という嬉しそうな声を直接聞くこと。残ってしまったものがあれば「どうしてかな」と考えて、また保育士の先生方と工夫を凝らすこと。毎日の積み重ねがあるからこそ、子どもたちが「また食べたいと思える給食」に育っていくんだと思います。

-ありがとうございました。


小鹿野町の「お試し移住住宅」は、リアルな暮らしを体験いただけるよう、町民とのコミュニケーションや保育施設の見学、農作業体験などのアクティビティも選択できるコーディネーター伴走型となっています。1泊~最長9泊が可能で、利用料は無料(2026年6月現在)です。移住のご検討にあたっての情報収集として、ぜひお気軽にご利用ください。

▼関連サイト

おがの保育所ホームページ
https://www.town.ogano.lg.jp/hoikusyo/index.html

おがのこども園ホームページ
https://www.town.ogano.lg.jp/kodomoen/

おがの乳幼児給食日記
https://oganoyouji9shoku.blogspot.com/

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